突撃!隣の人は熱☆病人  伊達 政宗 の場合






「 政宗、上杉軍が―――――
 ……なにやってんの。」
「 Hi lady.
 入る時はknockしろって云ってるだろ。Did you memorize it ?」
「 それはそれは、失礼致しましたわ政宗様。」
天井の板を外しひょこりと部屋の中に顔を入れると、その部屋の主が窓辺で項垂れていた。
音も無く忍び込んだ私に驚く訳でも無く、部屋の主は軽口を寄越す。
片手を額に宛がい片足を立てて仰向けに寝転がっている姿が不覚にも艶やかに見えた。
メリケンかぶれの、莫迦宗のくせに。
「 どうかしたの?」
政宗を見据えた儘、躯を反転させとんと爪先で着地。
それでも政宗は、微動だにしない。
「 今なら寝首を掻ける?」
「 Ha,nice joke.
 そんな気、更々ねぇだろが。」
「 あらあ、そんな事。私にしか判らないじゃない。」
話しかけてもなんの反応も無かったから、くすりと笑いながら独り言を漏らした。
ら、鼻でフンと笑われた。
なんか悔しい。
。お前は俺を裏切らない、だろ?」
見透かした様に、政宗は指一本動かさず小さく笑ってそう云うけど。
「 私は風魔忍者よ?
 貴公に就いたのだって、北条氏政様の命かもしれないじゃない。」
そう、私は北条家お抱えの風魔忍軍の一員だった。
お館様と云えば氏政様、北条氏政様であって決して他の人ではありえなかった。
なのに。
「 Hey yo,北条氏政"様"だぁ?」
「 ……失礼。
 貴公に就いたのだって、北条氏政公の命かもしれないじゃない。」
いつかの戦場で昇り龍の如く、舞う様に戦っていたこの人に魅せられてしまっていた。
目が離せなくなって、気付いたら氏政様の下を離れこの人の下へときてしまった。
そして敵であった私を、この人はなんの躊躇いも無く側へと置いたのだ。
懐が深いと云うべきか、警戒心が無いと云うか。
今も私の前で刀から離れて寝転がっている。私を見もせず。
危ういとかそういう事、考えないのかな。
でも、この寝転がってる姿さえ、妖艶だと思えてしまう。
なんて思う、私の方が寧ろ窮地に立っている様な気も……しなくも無い。かも?
「 I don't care.
 に刺されるなら、それも良いだろう。」
と云うかもう、きっと立ってるんだ。
窮地と云うか瀬戸際と云うか。
政宗の側に。
「 まぁ。
 私は病に伏せってる人間まで手にかける趣味は無いからねぇ、残念な事に。」
「 It is regrettable.
 今なら労せず俺の首、取れるのにな。」
なんて云って笑う政宗に、私は複雑な笑顔を送る。
「 だってそれじゃ、楽しく無いじゃん。」
「 Oh yeah,それもそうだ。人生enjoyしてこそだからな。
 。」
「 ん?」
くっと笑ったかと思うと、不意に横たえていたその躯を起こし私の眼を真っ直ぐに見据えてきた。
どきと鳴った胸を隠す様に私は嗤う。
「 Come here.」
ギラリと光る眼差しは、いつか見た昇り龍の様で、私の躯はその鋭い爪に握られている感覚に陥る。
そう。
私は、私の心は――――
「 Yes,sir.」
近くで見た政宗の顔は、幾分か紅かった気がする。






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