突撃!隣の人は熱☆病人  佐藤 成樹 の場合






「 シゲー、入るよー?」
「 おーう。っちゅーかもう入ってるやん。」
トントンと軽くノックをしてからドアを開けると、辛そうなそれでも私を迎え入れる返事が寄越される。
ご愛嬌ご愛嬌と云ってへらっと笑うと、金髪の少年が布団の中から私を見上げながらなにがやねんとツッコミを入れる。
紅い顔をしながら。
「 不良も風邪ひくんだね。」
「 不良ちゃうわぁ。これは地毛や……。」
「 熱出してる時くらいボケなくて良いんだよ?」
「 寧ろこれはツッコミや。」
ゲホゲホと咳き込みながらも笑ってシゲは答える。結構律儀な男だ。

私は持ってきたニアウォーターの蓋を開けてストローを刺し、シゲの口元へと零れない様運ぶ。
おおきにと小さく呟いて、シゲはやっぱり笑ってそれを口に含む。
こんな、しんどい時くらい笑わなくて良いのに。
それに今この部屋には私しか居ないんだから。
シゲは、不器用だ。甘えさせる方法は知っていても甘える方法を知らない。
「 美味いわぁ。」
「 他に欲しいものある?」
ぷはと小さく息を吐き出し、シゲはストローから口を離した。
額に乗せているタオルを冷やし直す為、私は氷水の入っている洗面器へと手を入れる。
タオル、随分ぬるくなってる。
「 うーん……が欲しいかな。」
「 あー残念。
 私はナマモノだけど食べ物じゃないから。他には?」
冷やし直したタオルを額に乗せると、シゲは静かに目を閉じた。
いつも本心を悟られない為か笑っておどけてるシゲだけど、こうやってじっくり見ると綺麗な顔してるんだよなぁ。
男のくせに睫も長いし、寝顔も綺麗って、なかなか居ないと思う。
女のコ達がきゃーきゃー騒ぐのも頷ける―――かも。
……口惜しいから本人には口が裂けても云ってあげないけど。どうせつけあがるだけだ。
それに優しいし気配りも出来るし、頼りにもなるし、面倒見も良いし、面白いし、サッカー上手いし……――――
って、なに私シゲの事褒め倒してんの?こんな金髪芸人ノリな男を。
?」
「 えうっ!?あ、ごめんごめん、なに?」
やば、惚けてたって。
紅い顔のシゲに凝視されてる。
「 ……いや、コーラ飲みたいなぁて云うただけやけど。」
「 あ、うんそっか。
 でもコーラは風邪が治ってからね。」
見とれてたとか考え込んでたとか、口が裂けても地球が滅亡しても云えないよね、うん。
でも、風邪ひいて潤んだ瞳してるシゲって、ちょっと色っぽいかも……って、だからなに考えてるんだ私は。不謹慎だろ。
「 他に欲しいものは?」
シゲの汗を拭きながら、焦ったように私は笑う。
ばれてない、よね?大丈夫だよね。
「 ……がおったらなんも要らん。」
「 へ?」
今なにか云った?声が小さくて聞こえなかったんだけど。
「 ……〜なんでもあらへん。もう寝るわ。」
「 う、うん?判った。
 それじゃ私、下に居るからなにかあったら呼んでね。電話、横に置いとくから。」
「 ……あぁ。」
「 おやすみ。」
「 おやすみ。」

なんだろう、急に。
機嫌悪くなった?私なにか気に障るような事云ったかな?
あ、そんなにコーラ飲みたかったとか?
―――後でヨーグルトでも持って行っとこうかな。








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