突撃!隣の人は熱☆病人 桂 小太郎 の場合
「 小太郎殿!只今戻りましたっ!!」
門を急いで開け玄関の扉を力任せに開け放って、私は息せき切らせて帰ってきた事を知らせる。
草履を脱いで上がり、きちんと揃えてから振り返るとエリザベスさんが立っていて……。
「 いったーい!?」
思い切りはたかれてしまった。
「 なにするんですかっ!?」
『 騒ぐな小娘が。
お上にバレたらどうする!』
……あ。
「 すみませんエリザベスさんっ!
私、そこまで気が回らなくて……すみません!!」
深々と勢い良く頭を下げる。
バカだ……私、どうしようもない程バカだ。
小太郎殿は攘夷浪士なのに、なにも考えずに思い切り名前叫んじゃった。
そのせいでもし幕府の犬、真選組にでも見つかったら、ただじゃ済まない!
今、小太郎殿は熱風邪を召されているから身体の自由が利きにくいのに。
最悪―――――
ゴッッ
「 あでっ!?」
目を瞑って頭を下げたまま考え込んでいると、再度頭に衝撃が走る。
星が飛び出しそうよ。
「 エリザベスさぁ〜ん……?」
『 お前が考えたところで何も変わらん。
さっさと桂さんに薬を届けろ。』
……。
なんだか酷い事を云われた――書かれた気がしないでもないけど、道理だよなぁ。
やっぱりエリザベスさんも、小太郎殿の事、心配してるんだ。
『 早くしろ!』
「 ぅああぁ、はっはいっ!!」
凄まれた。額に青筋立ってた。かぶりものだけど。
逆らって良い事なんてなにひとつないし、素直に従うべきだよね。
「 小太郎殿!只今参りますっ!!」
細い廊下を軋ませて、私は小太郎殿の待たれる部屋へと駆けた。
「 小太郎殿、 に御座います。
お薬をお持ち致しました。」
「 ああ、すまない。」
「 失礼致します。」
少しの間があって、辛そうな声が返ってきた。
スラリと襖を開けると、寝間着姿の小太郎殿が布団の上で上体を起こして座りながら私を出迎えて下さる。
……って、駄目じゃない!!
「 こっ小太郎殿!」
「 どうした?」
「 え?あっはい、あの……。」
続けて喋ろうとすると小太郎殿から返事が来て正直調子が狂ったけど、ここは一発ガツン!といかないと……!
「 横になられていないと御身体に障ります!
どうかすぐに横におなり下さいませ!!」
小太郎殿のすぐのお傍に駆け寄り、その風邪を召されている御身体にそっと触れる。
そう、そっと触れ……触れえええぇぇぇぇぇ!!!!!!???
「 すっすみませ――あ、いやっ申し訳御座いません!!」
勢いに任せて御身体に触れてしまった手を万歳よろしく仰け反らせる。
むむ胸が激しく脈打ってる!メーター振り切りそうだよひゃー!!
「 くすくす―――」
――え?
「 はいつも元気があって良いが、少し落ち着こう、な。
それに横になった儘では、折角が買ってきてくれた薬も飲めないであろう?」
小さく声をもらし優しく微笑まれながら、私の頭を亦そっと優しく撫でられる。
私を見つめてくださるその瞳が本当に優しくて美しくて、すいと吸い込まれてしまうようで。
激しく高鳴っていた心臓も、いつの間にか大人しくトクトクと脈を打っている。
「し、しかし小太郎殿………。」
その乗せられた小太郎殿の手の温もりが心地よくて、言葉が上手く出てきてくれない。
「 大丈夫だ。少し熱が出ているだけだから。
が買ってきてくれた薬を飲めばすぐに治るさ。
心配はいらない。」
「 はい……しかし―――」
「 それに。」
……え?
「 が隣に居てくれるだけで、元気を分けてもらえるようで……。
だから、大丈夫だ。
ありがとう。」