突撃!隣の人は熱☆病人 ラビ の場合
「 風邪ひいたんだって?」
『 そ゛う゛な゛ん゛さ゛〜゛……。』
「 熱も出てるって本当?」
『 本当本当。』
教団の薄暗い廊下を、無線ゴーレムを連れて歩く。
行き先は、唯一つ。
「 嘘だぁ。ナントカは風邪ひかないって云うじゃん。」
『 あぁ、ユウの事さ?
確かにユウは風邪とは無縁な健康優良児さねぇ。』
「 アンタもでしょ。」
つい、くははと苦笑いがもれる。
私はついさっき、イノセンス回収の任より教団本部に戻ったところ。
報告書をコムイさんに提出した時、バカが風邪をひいたと聞かされて。
嘲笑ってやろうと無線を飛ばしてみれば、予想より遥かに酷い声が返ってきて実はドキドキしていたり。
『 、なかなかヒドいさ病人に向かって……。』
ゲホゲホと咳き込みながら、それでも恨めしそうな声で返してくる辺り、まぁ、大丈夫……かな?
「 それで、何度まで出てるの?」
苦笑いがもれるのを噛み殺し、熱風邪なんてひいてるバカ、ラビに状態を聞く。
『 39度3分〜。
今は少し下がって38度7分さぁ……。』
「 なんだ、もう下がり始めてるのか。」
力ない返答に、ついおもしろくないという声音で反応してしまって、云った後にソレに気付いた。
『 〜!』
「 ごめんごめん。
でも本音だ。」
あはははと軽い笑いが口をつく。
ああ、どうして私はこう、正直かな。
「 あ、ユウだ。」
『 え?』
「 そういう事なんで、もう切るね〜。」
前方にユウを見つけ、ブツリと無線を切ってゴーレムをポケットに仕舞いこんだ。
ドガッガゴオォン――
「 はぁい、風邪っぴきラビさんお元気?
って、風邪ひいてるんだから元気じゃないってね。」
「 っ――!?なしてここに……?」
ラビの額から冷えているであろうタオルがポトリと落ち、目はぱちくりと見開かれ口が魚の様にぱくぱくと動いている。
一通りポーズをとり終えた私は足で開けた(蹴破ったとも云うかもしれない)部屋のドアを静かに閉める。
「 ……――。」
何かを云いたそうに私の名を呼ぶラビの首に、素早く手を沿え強引にベッドへと押し込む――もとい、横たわせる。
「 なに――ゲホゲホッガホッッ!!?」
「 ラービッ!」
私はにっこりと笑い、その儘ラビの横に腰を落とし足を組む。
「 な、なん、なに………?」
ほてった顔のラビは、引き攣った笑みを寄越す。
ふふ、可愛いじゃないの。
「 ゴーレムは10km圏内ならそれ同士で会話出来るもんね。
私が未だ外に居ると思ったんでしょ?
久しぶりよねぇ、ラビ。」
ふふふと自然に口角が上がるのが判った。
そして右手を、ラビの顎へとかけ――
「 私がたっぷりと、愛情込めて看病してあ・げ・る。」
「 〜〜〜!!?」
絶叫するラビの口に漢方薬を適当に詰め込んでやった。
久しぶりに逢えたっていうのに、風邪ひいてるとかなんなのよ。