なんか蜀で小ネタ
薄暗い山道を一人歩く女性
身に纏っている衣服は泥汚れやほつれが目立つ
「……はぁ、お腹…………」
お腹を押さえトボトボと力無く一人山道を歩いている
「っきゃあ!?」
ズベシャッ
「いたたた……何事……?」
顧みると足にツタが絡み付いている
「……踏んだり蹴ったりね、はぁ」(両手を地に着け項垂れ)
趙雲「如何なさいました?」
「きゃあああ!!!!??」(心拍数急上昇)
趙雲「――っと、申し訳御座いません、驚かせてしまいましたか」(馬から降りる)
「(何?誰?追っ手?追っ手なの!?)」(趙雲の声は届いていない/ガタガタ)
趙雲「もし、どうされました?」(屈んで片膝を着く)
「(先手必勝!)はっっ!!」
ゴスッ
趙雲「っつぅ……!?」(掌底を顔面・鼻の下に受ける)
「やっ!」
趙雲「――っっ」(脇腹に蹴りを受信)
「(今のうちに逃げなくては!)女だからと甘く見ない事ね」
立ち上がり、蹲る趙雲を何気なく見下ろす
「……?……青くない………?」
趙雲「……お元気なようで、なによりですね」(苦しそうに微笑む)
「…………」
趙雲「?如何なさいましたか?」(立ち上がる)
「み、緑……」(血の気の引いた顔で趙雲の服を掴む)
趙雲「はい!?」(ドギマギ)
「青じゃない、緑だわ……」(顔面蒼白)
趙雲「あ、あの……(如何されたのだろうか)」
「つっつかぬ事をお伺い致しますが、貴方様は魏のお方で御座いますか?」
趙雲の服をぎゅっと掴んだまま蒼白な顔で見上げる
趙雲「魏?いえ、わたしは蜀の武将、趙子龍と申します」
「きゃああああ!!たたた大変申し訳御座いません御無礼を働きました事、此処に謝罪申し上げまする!!!」(土下座)
趙雲「なっ!?お顔をお上げ下さい!」
「申し訳御座いません、誠に申し訳御座いませんでした!!」(びったりと額を山道につける)
趙雲「山中で突然声を掛けられ、警戒しない旅人など居りませぬ。わたしとて同じ事を致しましたでしょう」(オロオロ)
「かくなる上はこの、腹を切りお詫び申し上げる所存で御座います!!」(まだまだ土下座進行中)
趙雲「っ!?どうか御気になさらずに、お顔をお上げ下さいませ!」(オロオロドギマギ)
「いいえ、わたくしの行動は万死に値するもので御座います故」(絶賛土下座進行中)
趙雲「その様な事は御座いません、わたしこそ突然のご無礼を……」(滝汗)
「無礼だなどとんでもない事で御座います!」
趙雲「(なんと頑ななんだろうか)わたしなら如何とも御座いません故、お気を病まずに」
「しかし」
趙雲「女性の方にこのような言動を取らせる事の方が心苦しく思います」
「……!」
趙雲「どうぞお顔をお上げ下さい、そしてお怪我の手当てを致しましょう」
「け、怪我……で、御座いますか?」(尚も土下座中)
趙雲「ええ、山中にて蹲っておられました故、何かお怪我でもと……」(そっと肩に手を触れる)
「!!」
趙雲「じきに雨も降り出しましょう」
「……」(恐る恐る顔を上げる)
趙雲「さ」(にこり/手を差し出す)
「……は、い……(……素敵な笑顔)」(差し出された手を取る)
カッポカッポと一頭の馬に仲良く乗馬中
前に、その後ろに趙雲
趙雲「――では殿は魏からお越しになられたと、」
「はい、朝も昼も夜も無く、着の身着のまま逃げ出してまいりました」(溜め息)
趙雲「その細いお体では、かなりの御無理をなされたのでは……」
「でも、身売りに出されるのはどうしても嫌で……もう無我夢中でしたから
(この方は他人の話を真に受けすぎですわ。正直者と言うべきか、危機意識が無いと言うべきか)」
趙雲「……そう、で御座いますよね。思慮の無い愚問でした」
「そんな、とんでもない事で御座います!怪我の治療をしていただいた上こうしてお送りして下さる事までもありがたい事ですのに
その上ご心配までしていただけるなんて、わたくしは幸福者で御座いますわ」
趙雲「そのようなお言葉、勿体無く存じます」
「……こちらこそ、ですわ」(ボソリ)
趙雲「?何か仰られましたか?」
「いえ、なにも御座いません」(にこり)
趙雲「それで蜀には頼れるような方は居られるのですか?」
「ええ、一応そうだとは風の噂で聞いております」
趙雲「風の噂、で御座いますか。少々心許なく御座いますね」
「申し訳御座いません(それにしても硬い言葉をお使いになられますわね)」(苦笑)
趙雲「いえ!決して責めているなどという訳では御座いません!唯、もし、その方が居られなかった場合を考えますと憂いがその……」(焦り)
「ええ、存じ上げております。子龍様はお優しくいらっしゃいます故」(微笑み)
趙雲「そっそのような事は……無いかと………」(赤面)
「然様で御座いましょうか」(くすり)
趙雲「あっ……と……せ、成都に到着致しました」(焦りながら馬から降りる)
「(……これが成都?蜀の首都……?比べては悪いけれど…………小さいのね……)あの、子龍様」
趙雲「はい」
「わたくしも降りますわ」
趙雲「いえ、お怪我をなされておりますし、先に療養所へ参りましょう」
「いえ、でも怪我ならば子龍様に手当てをして戴きました故」
趙雲「わたしが施しましたのはあくまでの応急処置に御座います。きちんと治療をお受けにならないと化膿や悪化といったことも考えられます」
「……それでも一人で歩けます故」
趙雲「なりません」(にこり)
「う゛……(卑怯な笑顔だわ)し、しかし」(紅潮)
趙雲「さ、参りましょう」(満点笑顔)
「(この呆気( 者!療養所までお送り戴くなんて図々しいにも程がありますわ!!)」(項垂れ)
療養所から退出
趙雲「大事無くて一安心で御座います」
「ええ、本当に、なにからなにまでお世話をお掛けいたしまして……」
趙雲「袖振り合うも他生の縁と申しますし、御気になさらないで下さいませ」(にこり)
「……ありがとう御座いました(どこぞの貴族の方なのかしら、笑顔に嫌味が全く無いわ)」
趙雲「これで後は人探しのみと、なり申しましたね」
「あ、ええ、そうで御座います」
趙雲「すぐに見つかると良いのですが……その方のお名前は……?」
「え?……なっなりません!これ以上ご迷惑をお掛けする事はなりません!」
趙雲「しかしここまで来てしまいましては、最後までお付き合い致しますのが定石かと」
「なりません!!」
趙雲「しかし――」
馬超「なんだ子龍、往来で軟派とは随分成長したな」(背後から現る)
趙雲「軟派などする筈が無いでしょう貴殿とは違うのですから。そもそもどこから湧いて出てこられたのですか」(溜め息)
馬超「湧いて出てくるとは酷い言い草だな!」
趙雲「お仕事は如何されたのですかな、錦馬超殿?」(にっこり/嘲笑)
馬超「あいっかわらず可愛げの無い奴だなお前は。その嫌な敬語はやめろ」
趙雲「亦伯約が泣きますよ」
馬超「五月蝿い」
「(……錦、馬超……?)」(趙雲の陰で相手が見えていない)
馬超「で、お前は何やってんだよこんなとこで」
趙雲「ああ、討伐からの岐路の途中、山中で怪我をされている御婦人と出くわしてな」
馬超「へー、で、拾ってきたのか」
趙雲「……言葉遣いに気をつけろ馬鹿者」
「(この声……言葉遣い……)」
馬超「じゃあ俺も一つ挨拶でもさせていただこうか、ゴホン」(咳払い)
趙雲「お前という奴は……」(溜め息)
馬超「はじめましてお嬢さん、俺は馬孟起と申しまして―――」
「……超」(吃驚)
趙雲「ちょう?……ああ、お知り合いで御座いますか?」
馬超「あっ―――姉上!?」(驚愕)
趙雲「姉上!?」(吃驚)
近くの飲茶店にて
趙雲・馬超が並んで座り、その正面にが座っている
趙雲「……」
馬超「……」
「……」
不毛な沈黙の空気
趙雲「(……この方が、この華奢で可憐で落ち着いた雰囲気をお持ちの殿が孟起の姉殿だとは)」(既に2発喰らってるけどなお前)
未だ未だ続く沈黙
趙雲「(それにしてもこの沈黙……不仲――なのだろうか)
あの、そろそろ何か注文致しましょうか」
「そうですわね、お店の方にもご迷惑になりますし
―――と申し上げたいのですが、大変お恥ずかしい話なのですがその……」(俯く)
趙雲「はい」(真面目に聞き返す)
「わたくし、持ち合わせが御座いませんで……」
趙雲「……はい?」
「ですので子龍様と超だけで御注文して戴けませんか?」(顔を上げる)
馬超「――姉上」
「なんです?」
馬超「支払いは俺や子龍が持ちますから気にせず頼んで下さい」
「それはいけないわ。超はまだしも子龍様にこれ以上御迷惑をお掛けする事はなりません。特に金銭の事でなぞ以ての外です」
趙雲「いえ、殿。孟起の申します通りで御座います。お好きな物をお気に召すまま御注文下さいませ」(微笑み)
「し、しかし」(焦り)
馬超「女人に支払わすなど男が廃ります。それとも姉上は子龍に恥を掻かせたいのですか?」(溜め息)
「そんな事!!」
馬超「では決まりですね」(メニューを取り出す)
「なっ……」
趙雲「取り敢えずお飲み物だけでも――何になさいますか?」(にこり)
「子龍様まで!」
馬超「姉上、お静かに」
「お前にだけは言われたくありません!」(きっ)
馬超「あ、姉上……」(落胆)
趙雲「(流石姉弟……互いの扱い方を心得ている。それにしてもくるくると表情の変わられる方なのだな)」(にこにこ)
馬超「それでは此方で勝手に注文させて戴きますよ?子龍は何にする?」
趙雲「そうだな……安渓鉄観音(あんけいてっかんのん)にしようか」
馬超「そうか。じゃあ俺は洞庭碧螺春(どうていへきらしゅん)にでもしようかな。姉上は黄山毛峰(こうざんもうほう)でも構いませんか?」
「そのようなお茶……」
馬超「なんです、錦上添花(きんじょうてんか)でないと御嫌ですか?」
「そんな事誰も言っていないでしょう!黄山毛峰などではなく烏龍や茉莉で充分よ(揃いも揃って高級茶だなんて……)」
趙雲「しかし、折角なのですから……」
「お気持ちだけ有り難く頂戴致します」(にこり)
馬超「支払いの事なら心配いりませんよ姉上、子龍が全額持ってくれるそうですから安心してたかりましょう」
「超!なんという事を言うのですか!!」
趙雲「いえいえ殿、御気になさらず(もっと他に言い方があるだろうが馬鹿者)」(にこり/テーブルの下で馬超の足を思い切り蹴る)
馬超「子龍は懐の深い男ですから姉上(す、すまん……なんとかしようと思って裏目に出てしまった)」(引き攣り笑顔)
「しかし……」
趙雲「店主、安渓鉄観音と洞庭碧螺春と錦上添花を一つずつお願いしたい」
「子龍様!?」
趙雲「はい、なんでしょうか」(にっこり)
「う゛……いや、その、ですから………」(紅潮/しどろもどろ)
馬超「(強行突破かよ……姉上、惑わされないで下さい)」(溜め息)
お茶を飲みつつも無言が続く
趙雲「(仲が良いのか否か……)如何ですか?」
「あ、はい、大変美味しゅう御座います」(ペコと会釈)
馬超「そりゃ良かった」(にっかし)
趙雲「綺麗、で御座いますね」(眼を細める)
馬超「はあ!?」
「え……?」(ドキリ)
趙雲「?錦上添花が……」
馬超「あ、ああ〜!そうだよな!ああ、綺麗だ。ははは」(苦笑い)
「え、ええ、そうで御座いますね(ああ、もう、わたくしの呆気者)」(空笑い)
趙雲「……わたしは何か変な事を申しましたか?」
「いいえ、そのような事は御座いません」(にこ)
馬超「ああ」
趙雲「そう、ですか?」
「はい」
趙雲「ならば良いのですが……」
馬超「時に姉上」
「なんです?」
馬超「山中で怪我とお聞きしましたが、具合は如何なのですか?」
「少し捻っただけです、大事ありませんわ」
馬超「一体何をしていて怪我をなされたのですか?」
「考え事をしていたら、足元にあるツタに気がつかなくて……足を取られてしまいました」
趙雲「それで蹲っておられたのですね」
「ええ」
趙雲「わたしはてっきり賊にでも襲われたのかと危惧しておりました」(苦笑い)
馬超「ぶっ!賊だなんて、本気で言ってんのかよ?」(噴出)
趙雲「ああ、そうだが。着衣も少し乱れていたしな」
馬超「ないない、それは有り得ねぇって」
「!」
趙雲「何故そのような事を言い切れる!?」
馬超「だって、姉上だぜ?他の女性ならまだしも姉上が賊に襲われるとか……考えられねぇ」(堪え笑い)
「超!」
趙雲「孟起!実の姉上とはいえ失礼だろう!」
馬超「いやいや違うんだよ子龍。昔話を聞くか?」
「超、やめなさい!」(慌てる)
趙雲「昔話?」(馬超との顔を交互に見る)
馬超「俺が未だ馬家に居た頃――」
「超!やめて、お願い!!」(赤面)
馬超「岱と姉上と俺の3人で山菜を取りに行ってたんだが、その帰りに賊に出くわしてな」
趙雲「それは危険な」(馬超の眼を見て話を聞く良い子)
「超!!」(赤面)
馬超「幾ら武将の息子とて、素手で武装をしている大人に敵う筈も無い。が、姉上を危険に晒す訳にもいかぬだろう」
趙雲「ああ」
馬超「岱と2人で姉上を庇うように立っていたんだが」
「超!好い加減にしなさい!!」(顔を赤く染め馬超の隣に立ち首に腕を回す/つまりチョークスリーパー)
馬超「――と、このように武装した賊3人をものともせず勇敢にも立ち向かい見事仕留めたのだ」
趙雲「……真、か?」
馬超「信じ難いだろうが事実だ」
趙雲「……殿……」(驚愕の念/畏怖かもしれない)
「ちっ違うのです!あの時は2人を守ろうと唯我武者羅に……年長者が守るのは務めですから!」(耳まで真っ赤)
馬超「だからって素手で仕留めるとは、あの頃から姉上には頭が上がりません」(笑い)
「なっ!?」
趙雲「そう、であろうな……」
「子龍様まで!?」
馬超「お前も何かされなかったか?」(ニヤニヤ)
趙雲「……賊と間違われたのか、2発ほど戴いたが……」
馬超「効いただろ?」(ニヤリ)
趙雲「ああ、確かにあれは凄かった」(真顔)
「っ!あの時の事は誠に申し訳御座いませんでした!!」(勢いよく頭を下げる)
趙雲「あ、いえそんな……!(しまった)」
馬超「姉上はこう見えても体術は俺よりも優れているからな。一度も勝てた試しがない」
「超の精進が足りぬのです」
馬超「岱もか?」
「そうです」
馬超「父上もか?」(ニヤニヤ)
「っ!!」(赤面)
趙雲「?」
馬超「姉上に体術を教えたのは父上なのだが、いつの間にか父上よりも強くなってな。父上が負かされていたのを見た日は戦慄さえ覚えたな」
「超!!」(涙目)
趙雲「……一度お手合わせ願いたいもので御座いますね」
「っ子龍様」
馬超「やめとけやめとけ、どうせ負けるのが関の山だ」
「お前という子は……!」(ワナワナ)
馬超「姉上、そろそろお座りになられたらどうです?」
「……今晩、覚えておきなさい」
馬超「なっ――」
「槍を装備してきても構わなくてよ?」
馬超「姉上!?」
「手加減は一切しません」
馬超「ほ、本気ですか!?」(汗)
「父上に代わり、久しぶりに稽古をつけてあげます」
馬超「……(マヂかよ)」(絶句)
「たっぷりと可愛がってあげますわ」(にっこり)
馬超「……ごめんなさい」
「もう遅いです」(にこにこ)
趙雲「……(何を恐れている、そんなにお強いのか?)」(にこり)
馬超「(恐れもするさ……姉上の強さは半端じゃ無い。今でも勝てる気がしない……)」(顔面蒼白)
趙雲「(因みに今までの勝敗は)」
馬超「(全戦全敗だ)」(きっぱり)
趙雲「(……それは素手の状態で、か?)」
馬超「(否、俺が槍を装備していても勝てた試しが無い)」
趙雲「(……お前の姉殿は凄いお方なのだな)」
馬超「(ああ、そうだろう。優しいんだがそれ以上に強いんだ)」(遠い眼)
趙雲「一度わたしともお手合わせ願います」(にこり)
馬超「なっ!?(本気かよ!?)」
「子龍様、そんな……」
趙雲「それともわたしではご迷惑、でしょうか」(しょんぼり)
「その様な事は……!」(焦り)
趙雲「ではお手合わせ願えますか?」
「っ…………ええ、機会が御座いましたらば……」(作り笑顔)
馬超「あ、姉上……」
「超、今夜は寝かしませんよ」(眼が笑っていない笑顔)
馬超「ああああああ姉上!?」(顔面蒼白/滝汗)
「(こうなればもう自棄ですわ)子龍様もご一緒されますか?」
趙雲「よろしいのですか?」
「わたくしは構いませんわ(徹底的に叩きのめすのみですわ)」(にこにこ)
趙雲「それでは喜んで」(にこり)
「はい」(にこにこ)
馬超「(子龍……死亡フラグが立ったな)」(哀愁)
趙雲「ああ、殿が仰られていた頼れる方というのは孟起の事で御座いますよね?」
「ええ。無事に逢えて一安心です」
馬超「まぁ、俺も姉上に逢えて嬉しいですよ。お元気そうでなによりですし」
趙雲「わたしも安心致しました」
「子龍様には何から何までお世話になってしまいまして……本当に有難う御座いました」
趙雲「いえ、とんでもない事で御座います」
「明日もそう仰って頂ければ良いのですが」(にこり)
趙雲「?ええ」(にこり)
馬超「(逃げろ子龍!全力で逃げろ!!)」
趙雲「それで殿はこれから如何なさるのですか?やはり孟起と……?」
馬超「んー、そりゃあそうだろう。此処で姉上と逢えたのも何かの縁だし」(何かの縁?)
「そうですね、暫くは超の許に寄せて頂く予定で御座います」
馬超「暫く?」
「あら、いつまでもこんな小姑が居たのでは超に嫁いで下さる奇特な方が逃げてしまいますわよ」(にこにこ)
馬超「(ひぃっっ!!根に持ってる、かなり根に持っている!!)」(ガタガタ)
趙雲「それに殿ご自身もいつかは嫁がれる事で御座いましょうし」
「……そうだと良いのですが」(にこり)
趙雲「引く手数多で御座いましょうな」(にこり)
「明日もそう仰って頂ければ良いのですが」(笑顔)
趙雲「……?」(笑顔)
馬超「(……)」
ところ変わって馬超の部屋
馬超「子龍は亦夜に来るそうです」
「そうですか」
馬超「槍も持ってくるそうですよ」
「そうですか」
馬超「……本当になさるおつもりですか?」
「勿論ですよ」(にこり)
馬超「……姉上」
「何か問題でもありますか?」
馬超「……いえ、ありませんが……(根に持ってる……)」
「それでは良いではないですか」
馬超「……姉上は、それで良いのですか?」(恐る恐る)
「それもこれも、こうなったのはどなたのおかげかしら?」(微笑みの後ろにどす黒いオーラ)
馬超「ひいいいいっっ!!」(ガタガタ)
「全く、要らない事ばかり……」(溜め息)
馬超「……姉上の普段の行いが悪いのではないですか」(ボソリ)
「……超」(にっこり/後ろにどす黒いオーラ/父上スタンド発動?)
馬超「はっ!?あっあああぁぁあねうえええええぇぇぇぇぇぇぇぇえええぇぇぇっっっっ……」(絶叫)
馬超の壮絶な悲鳴が静かな成都にこだまする
「お茶の葉は何処にあるのかしら?」
馬超「………其処の……戸棚の………左から……二番目の引き出し……に…………」
床にうつ伏せの状態で突っ伏した儘右手をフルフルと挙げ指差す
「此処かしら?ああ、あったわ」
馬超「……よ、よう御座いました……」(ブスブスと白煙を上げる身体)
「なかなか良い暮らしをしているようですね」(お茶を淹れる)
馬超「………はい、殿のご配慮を給わりまして……」(ブスブス)
「蜀を統べているのは――確か、劉玄徳という方でしたか」
馬超「はい、劉玄徳様で御座います……」(ブスブス)
「……超」
馬超「……はい……」(未だ未だ突っ伏した儘)
「―――お前の殿は良い人ですか?」(馬超の隣に屈み頭を撫でる)
馬超「……姉上……?」(顔だけを上げる)
「お前の殿は――お前が仕える殿は、良い人ですか?お前が仕えるだけの価値がある人なのですか?」
馬超「……、はい。」(少しの間の後、真っ直ぐにの眼を見据え返す)
「……」
馬超「殿は、劉玄徳様は、私がお仕えしたいと――微力ながら御側で尽力致したいと切望しますお方で御座います」
「……超」
馬超「はい、姉上」
「そのような体勢ではどんなに真面目( であっても説得力がありませんよ」(そそくさと立ち上がる)
馬超「あねうえ……!!」(涙)
「早く此方にお座りなさい」
馬超「……はい」(ノロノロと立ち上がり座る)
「仕合わせですか?」(お茶を出す)
馬超「へ?」
「お前は今、仕合わせですか?」
馬超「……毎日が充実し、共に生きて往きたいと思い、守りたいと思うものが両手に溢れております」
「……」
馬超「これまでに自分の不甲斐なさのせいでこの両手から取り溢してしまったものは沢山あります。父上や妻、子……そして姉上、貴方の事も
それはどんなに嘆いても悲しんで呪ってももう二度と戻ってはきやしません
その事を忘れた訳では決してありませんし忘れようとも思いません
けれど今、亦、この両手で守れるかもしれないものがあるのです。私はそれを、今一度、今一度守り貫きたいと思っております」
「……それでお前は仕合わせなのですか?」
馬超「姉上……?」
「それでお前は今、仕合わせなのですか、超?」
馬超「ですから、」
「わたくしや父上の事、他者の事諸々は如何でも良いのです。お前が今仕合わせか、わたくしはそれを聞いています」
馬超「……仕合わせ、です」
「それは胸を張ってわたくしや父上に伝えられますか?
わたくしの眼を真っ直ぐに見つめて、言えますか?」
馬超「……はい」
「その気持ちは揺らぎやしませんか?」
馬超「辛い事や悲しい事、怒りに満ち溢れる事もあります
ですが、それでも亦こうして共に生きて往きたいと、共に守って往きたいと思える同志と出逢え同じ時を過ごせる喜びに、溢れております
姉上、超は今、とても仕合わせに御座います」
「……そうですか」
馬超「はい」
「お前の口からその言葉が聞けて、姉上は大変嬉しく思います」(馬超の頭を撫でる)
馬超「あっ姉上!?」(焦り/紅潮)
「けれどお前が独りで総てを抱え込む必要はありませんよ」(がしがしと乱暴に頭を撫でる)
馬超「はっ?」(混乱)
「辛くなった時はいつでも、周りにいる方に頼りなさい。甘えさせて戴きなさい
お前が独りで総てを抱え込む必要は何処にも無いのですよ」(ぐいと抱き寄せる)
馬超「っ姉上!?」
「お前が独りで総ての責を感じる必要性など、何処にも無いのです。泣きたい時はお泣きなさい」
馬超「……」
「強がる事も弱さを見せる事も、決して悪い事などでは無いのです」
馬超「姉上……」
「けれど独りで抱え込み処理しようとするのはお前の傲慢ですよ」
馬超「――っ!」
「信じなさい。お前が信じる者を、信じなさい。誰もお前を裏切りません。お前の想いを踏み躙りません
お前が信じなれけば、それは傲慢です。失礼にあたります」
馬超「……はい」
「お前が仕合わせで居てくれなくては、父上も姉上もお前に申し訳が立ちません」
馬超「……はい」
「解れば良いのです」(微笑み)
馬超「……ところで姉上」
「なんです?」
馬超「その……あの……」(もごもご)
「言いたい事があるのならばはっきり仰いなさい」
馬超「ですから……先程から、その……が、俺の頬に当たっているのですが………」(何故か赤面)
「……懐かしい感触でしょう」
馬超「なっ!?なんて事を仰るのですか!?」(益々赤面)
「見たところ女気が全くありませんからね、お前のこの部屋は。たんと堪能しても良いのですよ?」(にこり)
馬超「姉上!ご冗談はおやめ下さい!!!」(赤面混乱)
「どうなのです、今は意中の姫君は居ないのですか?」(がっしりホールド)
馬超「おおおおお居りません!!!」(ジタバタ)
「なんです情けの無い。お前は未だ若いのですから積極的にいかなくてはなりませんよ」(押し付け/よりは圧迫)
馬超「しっしかし俺には楊といううっっ……!!」(圧迫圧迫)
「楊殿もお前の仕合わせを望んでいます」(にこにこ/圧迫)
馬超「ううううおおおおおおおおおお―――――」(気絶)
「ふっ……錦馬超と呼ばれるようになっても、まだまだですわね」(満足げ)
一方趙雲は
姜維「子龍殿」(手を上げて近づいてくる)
趙雲「おお、伯約か」
姜維「どうかされたのですか?お帰りが少し遅かったかと……丞相と殿がご報告をお待ちになられておられます」
趙雲「ああ、すまない。少し所用が入ってしまって。今から殿の許に参るよ」
姜維「……子龍殿!?そのお怪我はどうなされたのですか!?」(ふと、趙雲の鼻の下の痣に気付く)
趙雲「うん?あ、ああ、これは……」(考え)
姜維「直ぐに何か冷やす物をお持ち致しませんと……!」(オロオロ)
趙雲「いや、大事無い。その気持ちだけ有り難く受け取っておくよ」(にこり)
姜維「しかし!」
趙雲「それより伯約、今宵少し時間を取れないか?」
姜維「は?今宵、ですか?(え?怪我の話題はもう終わりですか?)」(うろたえ)
趙雲「ああ。無理ならそれでも構わないのだが」
姜維「いえ!大丈夫です!」
趙雲「そうか、今宵少し付き合ってもらいたい事があるのだが構わないか?」
姜維「はい、勿論です!……それより子龍殿」
趙雲「では今宵迎えに行くので待っていて欲しい」
姜維「あ、はい、勿論です。それで」
趙雲「それではわたしは殿に討伐の報告をしてくるよ、亦後でな」(にっこりと笑い通り過ぎる)
姜維「……はい。
あ、いえ、そうではなくて、子龍殿!?何か冷やす物を……!!?」(取り残される軍師さん)