女心と秋の空

 頬に当たる風は冷たくて、胸の中がピリリと痛む。
 零れそうになるものを堪えて空を見た。
 夏よりも少しだけ高い空。
 段々と色が抜けていくように薄く感じた。
 今は無性にそれらが腹立たしくて、冷たくなった風が切ない。
 また、零れそうになる。
 上を向いて、風で乾かす。


「邪魔」

「!?」

 声に振り向けば仏頂面が一つ。

「な、なんだ神田じゃん」

 振り向いたものの、慌てて前を向く。
 声も極力震えないように抑えた。
 無論悟られないように。

「何してんだ」

 彼の言葉にわざと身体を伸ばして見せる。
 伸ばしてみれば関節がぱきりと鳴った。

「気分転換」

 空を見上げて深呼吸をする。
 肺に入る空気は少しだけ冷たい。
 零れそうになるのをぐっと堪えた。

「神田は?」

 後ろを向いたまま問うと不機嫌そうな声が聞こえる。

「任務」

 短い言葉で土を蹴る音が背に聞こえた。

 ざっざっざっ。

 それはこちらの真後ろで止まり、

 がしっ。

 頭を両手で挟まれた。ような気がする。

「な!? 何!?」

 ぐりっと思い切り後ろを向かされる。
 と言う事は彼と対面する事になる訳で。
 今、それはマズい。
 力を込めて踏ん張るけれど、身体はクルリと回転してしまって、

「テメ、人と話すのに顔を向けないとは……」

 言葉がそこで止まる。
 少し驚き見開かれた彼の瞳がある。
 こちらを差すまっすぐな視線。
 見られた。
 情けないほど目を赤くした顔を。
 また、零れそうになる。
 恥ずかしい。情けない。

「バカンダ!」

 叫んだら「あ?」と返って来て、

「バカンダ!」

 もう一つ叫んだら、

「テメェ…!」

 唸るような声が聞こえた。

「バ」

 もう一つ叫ぼうとしたら、

「それ以上言ったら言った分だけ接吻かますぞ!?」

 言われてまだ挟まれてた顔がぐいっと引き寄せられる。
 唐突に近くなる視線に、

「ひゃ!」

 思わず目を閉じた。


「…………」


「…………」


「…………」


「…………?」


 長い沈黙の後、ちらりと目を開けようとして、

 ゴヅンッ。

 額に鈍い痛みが走った。

「い、いったぁ…」

 思わずしゃがみ込んで頭を抱える。
 その頭上からフンと鼻で笑うのが聞こえた。
 キッと睨み上げる。そこには小憎らしく笑う彼。

「何すんのよ!」

 噛み付くように言うと、またフンと鼻で笑う。

「何だ、元気あるんじゃねーか」

 また土を蹴ってこちらを擦り抜けて行く。

「バ、バカンダ!バカンダ!バ」

 遠くなる背中に叫んでると、いきなり彼がこちらを向いた。

「チビ、任務から帰って来たら口洗って待っとけよ」

「口!?」

 ギロリと睨まれて、とっさに口を手で覆った。

 クルリとまた前を向く背中に、

「チビって言うな、バカンダ…」

 小さく呟いたら、背中の横に手が上がる。
 その指が4本から5本になった。
 そのまま手が降ろされて、まるでバイバイと手を振ってるように見えた。
 背中が遠くなって行く。
 ぼんやりと彼を見ていた。
 それは何だかこっちが見送りでもしてるみたいで、


「……馬鹿、一人で泣きたい気持ち台無しじゃん……」


 高い空は色味が薄い。
 切ない冷たさの風が頬に当たる。
 温かい雫が頬に落ちて、弧を描く口を擦り抜けて行った。
 
















「バカかあいつは…」

「何泣いてんだ…」

「目、閉じるかフツー」

「5回も言いやがって…」

「帰ってきてまだあんな顔してやがったら…」

「……」

「どうする……」




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お粗末様でした。
























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仲良くして頂いている153同盟の主催者REAL DREAMのあずまうしおさんから頂戴しましたv
私が夢お題で趙雲書くかも〜と云って非常に反応して下さった貴重なお方です
趙雲書いてくれたら神田さん書いてくれると豪語されまして
未だ馬超はおろか趙雲すらも書けていないにも関わらず私に重圧を与える為に私を励ます為に下さいました。
神田さんの特徴を巧く掴めていると思います。
接吻ぶちかましてくれ神田さん!!!
あうさん、ありがとうございましたっ!!
蛇足ですが名前変換、円月輪にしちゃうつもりだったらしいですうわー無くて良かった鼻血噴出するわ!!