ブツッ
鈍い音を立て、細工を施された純銀のボタンが一つ、青い空へと吸い込まれた。
灰銀色に光る刃。
太陽の光を反射させ残像を作るそれが大きく薙ぎ払われる。
脈動がせぬ生命体が2つ、距離を取るように離れた。

「何だこのガキ!?装備型のクセにオレラの血のウィルスが効かねぇなんてよ!!」

金属が潰れる音が青空の下響き、辺りを強烈な瘴気が包み込む。

「おいガキ!お前一体何者だ!?」

あれだけ居た仲間を総て屠られ孤立無援となったレベル3のアクマが、千切れた右腕を白と黒の少女へと
力いっぱい投げつけながら叫ぶ。

「I am a Exocist. 」 (私はエクソシスト)

言うが早いか、独りでに動く投げつけられた鋭い右腕を、不釣合いに大きな刃で細斬れに刻み超スピードで
駆け出す白と黒の少女の紅い瞳が静かに燃える。
元の形を保てず地に失墜する、右腕。

「それは知ってる!!ってゆーか、いーかげん死ねよ!!」

ボディーから細いナイフのようにプレートを幾つも作り白と黒の少女目掛け突き刺すレベル3のアクマだが、
瞬きをするよりも早くそれら総てを細かく細かく、斬り刻まれ叩き落される。
そしてグンと、詰められる間合い。

「I am already dead. 」 (私は既に死んでいる)

白と黒の少女の紅い瞳が鋭く燃え盛り、金属がぶつかる。

ブツブツブツッッ
アクマの鋭い左手が白と黒の少女の胸元を滑り、細工を施された純銀のボタンが3つ、青い空に吸い込まれるように放物線を描き、柔らかい音を引きつれ地に落ちた。
メタリックなボディを貫く灰銀色の刃。

「You too.」 (貴方もね)

太陽の光を反射させ、残像を作るそれが大きく上下、左右に動かされる。
まるでキリストの磔柱が作り出されたかのように見える灰銀色の残像。その中央には、4つに分かれたアクマの残骸が一瞬だけ在った。
ザワリと通り過ぎる冷たい風がアクマの瘴気と白と黒の少女の服の一部を連れ去る。
風になびく少女の長い白髪。
光を収める冷たい刃。紅い瞳。
あちこち裂かれた黒い団服。
膨らみ始めた小さな胸が覗く、胸元。ハタハタと襟が元気良く風に揺れている。

「――やっと追いついたと思ったら、まーたハデに散らかしやがって。」

草を踏みしめ空と対照的な長い赤毛を少し乱して、紫煙を引き連れたクロスが大股に少女へと歩み寄る。
能く見ると少し、肌がしっとりと汗ばんでいた。
ぐるりと、大きく振り返る少女。

「――!!」
「クロス!もうクロスの仕事、終わったよ!」

おい、と呼びかけたクロスは言葉を失った。
青い空の下、緑豊かな草原で白い髪を風になびかせ黒い団服を纏う紅い眼の少女・
風に揺れはためくスカートの裾。
大きく踊る、外では開かれる筈の無い胸元。
そこから覗く、白磁のように透き通った素肌。膨らみ掛けた小振りな胸と、小さな谷間。

「今日はどこも壊してないよ、えらい?えらい!?」

ピョンピョンと跳ねクロスへと進むは弓形に眼を細め、持っていたイノセンスを空高く放り投げた。
ぷるぷると小さく揺れ、裂けた隙間から見え隠れする。

「〜〜※@&%$#¥▽◇!!!!」

言葉にならぬ魂の叫び。
此処が誰も居ない広大な草原で良かったなどとこれっぽっちも考えられないクロスは近寄るの左右の襟を力強く握り、これでもか!と素早く強引に閉じた。
反動で、の体がマリオネットのように動く。
風に晒されている顔の半分を蒼白く、或いは紅くするクロスは柄にも無く反射的に周囲を見渡した。
青い空を優雅に旋回する鳶をきつく睨みつけ、他に誰も居ない事を確認すると深く深く息を吐き出し、キッと真剣な表情での眼を見つめる。

「……クロス?どうかしたの?」
「……『どうかしたの?』じゃねェ!!何してんだお前は!!!」

空とぼけるに呆れながらも声を張り、眼鏡の奥から強く強く見つめる。

「…………?……何、って、何?」

だがやはり、は予想通りのリアクションを寄越すものだから、がなるクロスも脱力してしまう。
――こういう反応をする時は大事無い
さりとて、一応うら若き美少女が胸を肌蹴させていれば紳士であれど慌ててしまうものだ。
眼を閉じ一つ大きく溜め息をこぼしたクロスはまじまじと己の両手を見つめ、どうしたものかと思案する。

「……お前はストリッパーじゃねェんだから……ボタンどこやったんだ?」

力強く閉めていたの胸元から力を抜き、片手で両襟を持つと空いた手での小さな手をそっと持ち、
自分自身で襟を閉じておくよう促す。
促される儘襟を両手でぎゅっと持ち俯いてそこを見つめるは、あれ?と疑問を口にした。

「ボタン……無い?どうして?」
「オレが聞いてんだよ……。」
「クロス、ボタンが……!!」
「あーはいはい、どーせ戦闘中にフッ飛ばされたんだろ……ったく……。」

頭を抱えるクロスに、今気付きましたと訴えるは慌てたように両手を開く。と、鬼の形相のクロスに襟を強く掴まれた。

「ボタンはオレが捜すから!お前はココをしっかり持って閉じてろ!!良いな、!?」
「でも……!」
「わかったな!?」
「!……うん、わかった、しっかり持ってとじてる…………。」




青い空、風に揺れる緑の草原。
広大なそこに独りぽつんと佇む白い髪の少女。
長い赤毛を鬱陶しそうに風になびかせるクロスは、膝まである草の根を分け、飛び散った4つの小さなボタンを
腰を曲げ団服の裾を地面につけて必死に捜す。


肌蹴た




「…………クロスー。」
「……なんだ。」
「……せくしー?」
「閉じてろ!!っつーかそんな言葉どっから仕入れてくンだよ!?」






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a title valse
For BAMBINO!様 and you
素敵な企画に参加させて頂きまして、ありがとうございました!
偶には、余裕たっぷりの大人も慌てると良いですよ