月が動く。


部屋の大きな窓から覗く月は、恐ろしい位綺麗で。
こんな夜は、一人では居たくない。


「 ユウ、逢いたい……。」


大きな月を横目で見て、何故か涙がこみ上げてくる。

一人じゃない。私は一人じゃない。
部屋の外に出れば、教団職員が必ず誰か居る。
私は一人じゃない。
今はこの教団が、大きな家族みたいで。

けれど、けれど。

こんな月が綺麗な夜は、怖くなる。
やはり、私は一人なのではないか。
私は、独りなのではないか。
結局私は、ここにも居場所はないのではないか。


酷く躯が冷たく感じて、自分で自分を抱きしめる。

「 ユウ、逢いたい。早く……早く帰ってきて。」

怖くてきつく躯を抱きしめても、横を見れば明るい月が照っている。

嗚呼、こんな綺麗な月なのに、どうして私は恐怖を感じているのだろう。
どうして私は、独りだと思うのだろう。
どうして私は、泣いているのだろう。

きつく躯を抱きしめても、涙は止まらない。
横目で見た月は涙でぼやけた。

こんな綺麗な月には、ユウが能く似合うと、酷く思った。


「 ユウ、逢いたい。逢いたいよユウ。」


止まらない涙は、ユウへの気持ちと共にあふれる。
いつからか、私の心の中にユウが入ってきた。
いつからか、私の心の中にユウが居座っていた。
いつからか、私の心の中はユウであふれていた。
いつからか、私の心はこんなにもユウを求めていた。

人と触れ合う事を恐れて独りになった私が。
人を、ユウを強く求めている。
こんな気持ちを抱くなんて、思いもしなかった。
驚いて、でもどこか嬉しくて、切なくて。
口をついて出る言葉は、どれもユウへのもので。

。」

風が吹いた。
暖かな風が、一陣。

空耳だと思った。そんな筈無いって。
だってユウは、任務に出ている筈。

。」


横目で見た月は、相変わらず大きくて綺麗で。
でも。

「 なに泣いてんだよ。」

そんな綺麗な月さえ、自分を一層際立たせる為の背景にしてしまう人が、窓辺に立っていた。

嗚呼、やっぱり。
今夜の月は、酷くユウに似合う。
そんな事を考えながら、私は泣いた。

風が一陣、ひゅるりと吹き抜けて。

「 泣いてんじゃねぇよ。」


ユウの腕に包まれて、私は独りではないと、そう思えた。


後光