深い想い
「 神田ぁ!」
好きな人の名を呼ぶのが、こんなに愛しいなんて
きっと、この人を好きにならなければ気付かなかっただろう
「 ああ?」
それに気付かせてくれたこの人、黒髪ツリ目長髪ポニーテール侍のエクソシスト、神田 ユウ
本当に、この人には感謝してる。大切な事に気付かせてくれたのだから
「 ……行っちゃうの?」
返ってくる言葉なんて判りきってるのに、毎回聞いてしまう
すがる気持ちで、違う答えを期待している
「 ――ああ。」
少し間を置いた後、目を閉じ短く息を吐いてこう答える
そう、いつもこう、同じ言動が返ってくる
「 そっ……か。だよね、うん。ごめんね、変な事聞いちゃって。」
判ってる、判ってるよ充分
厭な位判ってる。判りたくないけど、……判ってるよ
神田はエクソシスト。私はしがない黒の教団一総合管理職員
故に、神田は世界各地を飛び回る
任務とあらば、いつでも、どこへでも
例えそれが私と逢っている時だって
例えそれが恋人と過ごしている時間であったとしても
そりゃ、エクソシストだから仕方無いって、仕事だから仕方無いって判ってる
けど、けど……
「 ――フン。」
呆れられたかな?
判ってるよ
けど、けど
神田が強いというのは知ってる
でも
必ず、無事に帰ってくるなんて保障、どこにも無いでしょ?
必ず毎回、生きて戻ってこれるなんて確証、どこにもないでしょ?
それが怖いの。それが恐ろしいの。それが不安なの
それが
「 すぐ戻ってくる。」
そう云って抱きしめてくれる神田が、痛い程に愛おしくて
不意に頬を伝う熱が、私の心
「 判っ……だい………ブ――」
上手く言葉が出ない
するとより強く、神田は抱きしめてくれた
それが更に嬉しくて、愛しくて、仕合わせで
この時だけは、不安も恐れも掻き消える
「 。」
優しく低い声で私の名を呼ぶ神田
「 ……うん。」
流れた涙もそのままに、見上げる先には悲しげな儚い神田の顔が見える
そんな表情を見ると、神田も私と同じ想いなのかと、亦涙が頬を伝う
「 ――。」
ゆっくりと、神田の顔が近づいてきて
ふと優しく、神田の唇が私の額に触れた
その後、じっと目を見つめてくれて、髪を柔らかに撫で下ろす
「 行ってくる。」
まるで子供をあやす様に微笑むのは、私の愛しい人
「 行ってらっしゃい。」
そう伝えるのに精一杯な私の頬に、神田は亦唇を寄せた
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