「 あれ、起きてたの?」
がマリアンの部屋に戻ると、葉巻に火をつけているところだった。
「 ……。」
何かを云いた気に、マリアンは黙ったままを見つめる。

「 アレン君、起き上がれるまでは回復したけれど、未だ熱は残ってるわ。
 全く。
 貴方一人なら何も云わないけれど、あんなに小さな子を連れているなら生活面にも気を配って頂戴。
 今回は偶々私の処に居たから良かったものの、もし船の上とかだったら如何す―――っ!?」

薄明かりの中、お説教を始めたを強引に抱き寄せる。

「 ……なによ。」

お互いに相手の顔が見えない。
お説教をしていたそんなの顔は、不覚にも少し紅くなっている。
葉巻を灰皿に置き、更に深くマリアンは抱きしめる。

「 俺の前で他の男の話をするな。」
「 ……あのね、他の男の話って、貴方の愛弟子の現状を話しただけじゃない。」
「 他の男には変わりない。」

「 ……。」
其処まで云われると流石のも折れたのか、言葉を閉じた。
低い声で囁かれれば、誰だってそりゃあ勘違いするわよと、心の中で嘆きつつ。



暫くの静寂の後、先にそれを破ったのはだった。

「 未だ……此処に居てくれるんでしょ?」
ポツリと小さく遠慮がちに、そう言葉を漏らす。

が望むなら、永遠に傍に居る。」

きつく抱きしめて、少しも漏らさない様に抱きしめて。
マリアンは応える。
意外だったのか、マリアンからの言葉を聴いたは始めは驚き目を見開いていたが、次第に細めていきゆっくりと閉じた。
その頬はほんのりと熱を帯びている。


「 嬉しい……けれど、それは未だ望めない事だわ。
 私だけ、それを望んでも良い筈がないもの。
 でも――ううん、だからマリアン、―――」


「 ――判っている。」


「 ……ええ、ありがとう。」


言葉を遮りの口を己のソレで塞いだマリアンに、は涙を流して応える。

好きな人と好きな時に好きな様に逢えないもどかしさ。
それでもいつかきっと必ず、自分の元へと帰ってきてくれるだろう。
大義を果たし、世界に平和が満ちた時。

その時まで、今はしばしの休息を。    






大人の事情