笑うな!!






「笑うな!!」

少し狭い部屋に響く大きな笑い声。

「あーっはっはっはっは…!!」
怒られようとも止む事のない笑い声。
唯静かに、少し狭い部屋に響き渡る。

 ――生徒会室――
これがこの、少し狭い部屋の名前である。

「もう一度云う。笑うな、八月。いい加減にしろよ。」
凄味を効かせて相手の笑を抑圧しようとする。
しかし笑い声はやっぱり止まない。
当の笑い声の主は、俯いて少し苦しそうに笑っている。どうやら笑いすぎて息が上手く出来ない様だ。

「いや……すみませ……でも……こればっかり…は……。」
息も絶え絶え、笑いながら言葉を漏らす。
くつくつと 少しずつ笑いが止んでいく。

「そんなに可笑しいか?そんなに面白いか?」

苛苛した様子で胸ポケットから煙草を取り出し火をつける。
睨み付けながら。荒荒しく煙を吐き出す。

「あ……いえ、そんなつもりじゃ……。」
先刻まで笑っていた―八月と呼ばれている―男性が、灰皿を手に取る。

「可笑しいとか面白いとか、そういう事じゃなくて……。」
なだめる様な物云いで、手に取った灰皿を相手の男性の前に静かに置く。

「じゃあなんなんだ。」
トントン、と煙草を指で弾いて灰を落とす。

「いえ、その……阪本先生らしいと云うか何と云うか……。
 心配していないフリをして、心底心配している姿が……その……。」
言葉を詰まらせる。カップを手に取り、コーヒーを飲んで咽喉を潤す。

「姿が何だ?云ってみろ。」
あくまで威圧的な態度で訊く。

コーヒーのカップをドンッと置いて、一呼吸つく。

「その姿が可愛らしいんですよ。」

 云うなり、すっくと立ち上がり、ドアに手を掛け出て行こうとする。

「まぁ、そんな事、口が裂けても云えませんけどね。」
ガラガラ、ピシャン。
後ろ手でドアを閉める。
タタタタタ……と小走りする音が遠退いて行く。

「ははっ。」
小さな笑いが漏れた。
「云ってんじゃねーか。」

生徒会室。
少し狭い部屋に、煙草の煙がたゆたっている。





















設定:
八月=小町 八月
コマチ ヤツキと読む。国語科教諭。三月のクラスの担任。男性。
24歳だっけ?多分24歳(曖昧)。
一部女史にモテモテ。笑える。

阪本先生
確か、社会科の教諭。うん、そうだ。思い出した。男性。
ミキオと云うのが名前。漢字は忘れた。
翔也のクラスの担任。
小町より年上。初期設定では42歳。現在は20代後半。曖昧。
因みに生徒指導の先生でもある。竹刀は標準装備・つまりオプションだ。
愛煙しているのはマルボロの赤・ボックス。










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