一緒に行こうよ。






「テレテテ テレテテ……♪」
携帯電話が鳴った。
「チャララララ チャーンチャーン チャチャチャ チャーチャーチャーチャーチャーチャー♪」
取り敢えず開いて止める。そういやこの曲、アイツからのメールの着信音やったっけ。

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  @ △/△ 凍季也
   無題
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あー、やっぱり。

今日は休日やってのに、なんの用やねん。折角気持ち良く寝てたのに……。
なんて思いながらも、少しにやけてる自分に気付く。未だ内容読んでへんのに。阿呆や。
何かよー判らんけどドキドキしながら開けてみる。

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 英語と独語の辞典持っ
 てない?
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来たよコレ。来た来た。
黒一色のメール。絵文字も顔文字もあらへん、黒一色のメールが。
なんやねん、女のくせに(これもジェンダーになるんか?)黒一色て。色気もくそもあらへんわ。
確かに面倒臭いし俺も使わんけど。せやけど。
やっぱ淋しいやんこういうメール。そら枕も濡らすわ。

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 俺が持ってるとでも思
 うか。
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俺もこんな返信してまうけど。
まぁ、絵文字や顔文字の多用は正直退くけど。
せめて何か一個くらい。せめて件名をおもろくするとか!!!!
「テレテテ テレテテ テレテテ テレテテ…♪」

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 判った。
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判った!?判ったってなんやねん判ったって!!
何が判ってん。何を判ってん。

ちょっと酷ない?淡々とし過ぎちゃう?たった一言、四文字で終わらすなんて。
そこに愛はあるんか!?否、無いです(一人突っ込み)。
それにしても非道いわ。折角着替え迄して待ち構えてるっちゅーのに。
なんやねん。俺の休日を返せや。そら枕も洪水や。

『コンコンコン……。』
ドアを叩く軽快な音が聞こえた。
折角の休日やのに、この上来客?適当な事云ってあしらったろ。
莫迦正直に相手する事あれへんわ。

「はいはい、誰やねんこんな朝っぱらから。」
うだうだ云いながらドアを開ける。

ホンマびっくりしたわ。なんなん自分。そんなん有り?
めっちゃ嬉しいやん。
俺が犬やったら間違いなく尻尾はちきれんばかりにぐるんぐるん廻ってるわ。

「行こっ。」
「は?」

行き成り訳判らん事云うから、思わず素っ頓狂な声出してもうたやん。

「だから、行くよ。早く仕度して。」

何その夫婦みたいな会話。っちゅーか主語と目的語が見つかりませんがネーサン。

「……なんやねん。行くって何処行く気やねん。先それを云わんかい。」

ホンマは、お前と2人で行けるんやったら、何処でも嬉しいねんけどな。
こういうやりとりも好きやねん。

「本屋に決まってるじゃん。」

いや、待て。
行く=本屋 なんて等式、成り立たんわ。

「僕も翔も辞典持ってないんだから、買いに行かなきゃ駄目でしょ?」
御尤も。でもな。
「俺は何も持ってへんとは云ってへんで。」

あ……固まった。ちょっと怒ってる?でも怒った顔も可愛いなぁ……。

「待て。じゃあなんだあのメールは。凄い紛らわしいんですけど!」
嗚呼、めっちゃ怒ってる。
「早とちりしたんはお前やろ。ちょお待っとり。今辞典貸すから……。」

俺が部屋ン中戻ろう思たら。
何で部屋の住人押し退けて先に入んねんな。後ろから襲ったろか。

「って固羅固羅。何、人の部屋・家探ししてんねん。辞典やったら机の棚に置いたあるやろ?」
ガサガサと人の引き出しやら鞄やら探りよって。何がしたいねん。
「……財布。」
そう云って貴女が手に持っているモノはナンディスカ!?
「固羅固羅。人の財布を勝手に取ったら泥棒やで?それをこっちにって……あら?」
すんなり俺に渡してくれるやん。

何がしたいの?

「はいっ、これで準備オッケーイ。さ、行きましょう。」

何にこやかに人の身体バシバシ叩いとんねん。

「もしもーし、先が見えんのやけどー?」

一人突っ走りすぎちゃう?ついてけんわ。

「だから、辞典買いに行くんだってば。本屋さんに。」
早く早くと手招きジェスチャー。
何て云うかもう、ホンマ可愛えよな。抱きしめたいわ。
でもな。

「いや、だからよ。ソコに辞典あるやんか。」

正論。
もう、このまま遊びに行こうや。っつーか部屋におろ。

「駄目。だって今回借りても次に亦使う時借りに来るなんて面倒。だから買いに行くの。」

何しれっと云っとんねん。意味判らん。ほんならあんなメールすんなや。

「んじゃ一人で行って来たらええやろ。なんやったら資金くらい出したんで……?」
っとと、ヲイ。人の腕を引っ張んな。バランス崩すわ。

「場所識らない。」

間近で見る真剣な顔も可愛いなぁ。……キスしたなるわ……。
ちゃうやろ。

「待て。場所識らんのに行こうなんてよう云うな。恐ろしいわ。」

ホンマなんか、後ちょっと近づけたら出来そうやなー………。

「だから、翔にナビゲートして欲しいの。こっち来たの最近だから未だ能く判んないし……。」

あ……ちょっと困った顔してる……。

「お願い。一緒に行って?一緒に行こうよ……。」

決定打。
俺の負け。お前可愛すぎ。
これで断ったら他の奴ンとこ行くんやろ。そんなん厭やし。
元々俺は、お前と2人きりで行けるんやったら、買い物でも何でも嬉しいねん。
でも。こういうやりとりも好きやねん。
ホンマ、可愛いな。好きやわ。やっぱ。

「しゃーないなー。色々忙しいけど泣かれたら面倒やし一緒に行ったるわ。」

頭くしゃくしゃ撫でて。ごめんな、こんな云い方しか出来んで。

「お忙しい中 申し訳ありませんねぇ。」

嗚呼、手ぇ払い除けられてもた。まぁ、しゃーないか。

ホンマ俺、お前の事好きやわ。





















設定:

翔=諸星 翔也
高校3年生なのにすでに19歳。まぁ訳有りという事だ。関西出身。
因みに002.に出てきた夕樹のあに。
三月とは幼馴染といった所。親同士が親友なのさ。
三月大好き。意外と美形(なにそれ)。

お前(凍季也)=三月 凍季也
元ネタ漫画Half Dollの主人公。女の子だよ。
基本モデルが居るんだが、まぁそんな事はどうでも良い。
高校一年生。蝶が付くほど長髪。低身長。



今回は、関西弁で読んで頂くと、臨場感倍増。
え?関西弁のイントネーションが判らない?そういう君は、関西のお友達に朗読して貰おう。
因みに着信音は、FF6のセッツァーのテーマ。










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