愛してるって云ってくれない?






「居心地の良い風ですね。」
高台の丘の上にある、月桂樹の根元に一組の男女座っている。
「……。」
男性は何か考え事をしているのか、唯無言だけが木霊する。

サラサラと、葉が触れ合う音だけが響き渡る。

隣に座る男性からは、相変わらず無言だけが返ってくる。
綺麗な金の髪だけが、風に揺れている。
『まぁ、仕方ないですね』と云いたげな顔で女性は苦笑する。

サラサラと、葉がこすれる音だけが五月蠅く聞こえてくる。

緑豊かなこの国で、こうして、何をする訳でも無く、唯座っているだけ。
――隣には……貴方様が。
   これが最高の贅沢で、これが最好の幸せでなければ、何をそう呼べば良い?――
女性は心の中で、そう自分に問うた。
悪戯に風が自分の髪を乱そうとも、女性は微笑みを絶やさない。
「幸福な時間とはとても穏やかなものなのですね。」
そう云い終わった時、女性の左肩に何かがぶつかった。
ぶつかった・というか、もたれ掛ってきた。
隣に座っていた男性が。何を話しかけても応えなかった男性が。
否。応えなかったのではない。応えられなかったのだ。寝ていたのだから。
昼下がりの穏やかな午後、気持ちが良くて寝てしまう事もあるだろう。
例えそれが、一国の王子であろうと。
女性は目を細め、優しく男性を見つめる。
「……ハムレット様……。
 お慕いしております。周囲から、例え身分違いの恋だと云われても。
 わたくしは本当に……ハムレット様の事を、心から愛しています。愛しております事を、天に居られる神に誓います。」
男性の右手にそっと自分の左手を重ね合わせ、目を瞑る。
「それでも、貴方様のお心が判らず、とても心苦しく、怖れを抱いております。
 どうか……どうかわたくしめに、"愛している"と、"心から愛している"とおっしゃってはいただけませんか……?」

サラサラと、風が木の葉を揺らす音だけが――五月蠅く響いている。

「そのことがどうか――貴方様への、そして、わたくしめへの罪になりませぬ様……。」


悪戯な風が、2人の髪を優しく揺らす。





















設定:

男性:ハムレット=諸星 翔也

女性:オフィーリア=三月 凍季也



元ネタは、ハムレットです。シェイクスピアの四大悲劇の。
因みに事が起こる前が設定(当たり前)。
多分、これを書きたいが為に100のお題に挑戦したんだと思われます。阿呆。










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