趙子龍の日記



   




○月×日
殿がこの地に来て、1年が経とうとしている。
彼女は何処か抜けてぼーっとしていて、私は心配で仕方がない。




殿!」

「・・・・あ、趙雲さん」


無数の星が綺麗に輝く夜更け。
異世界から来たと言う不思議な女性””は、中庭で一人その星を見つめていた。
仕上げるのに時間が掛かってしまった書簡を、諸葛亮のもとへ届けた趙雲がそんなを見つけた。
自分の所へ駆け寄って来る趙雲に、はニコリと微笑んだ。


「何をされているのですか?城の中とは言え、夜更けは危険だと言ったはずです」

「うん。星見てたの」


全く危機感のない表情で答える
趙雲はため息を吐いた。


「そうですか・・・。ですが今宵は冷えます。さぁ、もう部屋へ戻りましょう」

「ええ?もう?・・・・・もう少し・・・ダメですか?」


チラリと見せる上目遣い。
趙雲は一瞬、うっと動きを止める。


「だ、だめです。さぁ、行きましょう」

「・・・・は〜い」


少し落ち込んだ様子のに心を痛めながらも、趙雲は彼女を連れてその場を後にした。


「少しは危機感を持ってください。夜更けを利用して動く間者も多く居るのです」


黙って自分の後ろを歩くに、趙雲はつい小言を言ってしまう。
本当は自分だってそんな事言いたくはない。
だが、彼女の身を守るにはそうしないといけないと、趙雲は自分に言い聞かせる。


「聞いてますか?殿」


返事をしないに、趙雲は振り向き確認するように声を掛ける。
だが・・・


「・・・・・殿?」


居ない!
趙雲は思わず慌ててしまう。
確かに自分はを連れて中庭を後にしたはずだ。
自分の後ろを着いて来ているのも確認した。
それなのに何故!?

趙雲はキョロキョロと周りを確認して、歩いて来た道を急いで戻って行った。


殿!」

「・・・・あ、趙雲さん」

「趙雲さんじゃありません!」

「え?」


彼女は居た。
廊下の途中で立ち止まり、窓から見える星を眺めていたのだ。
ため息と共に大声を出してしまった趙雲。
だが、彼女はきょとんとしている。


「・・・・馬超さんですか?」

「・・・・は?」


意味の分からない事を言うに、今度は趙雲がきょとんとする。


「だって今、趙雲さんじゃないって言うから・・・」

「・・・・そう言う意味じゃありません」

「じゃあどう言う・・・?」


どっと疲れが出た。
何故伝わらない?危険だと言ったのに。
深い深いため息を吐く。
そんな趙雲の顔をは心配そうに覗きこむ。


「大丈夫ですか?具合でも・・・」

「いえ、悪くありません。殿、先程私が何て言ったか覚えていますか?」

「・・・・えっと・・・、”そう言う意味じゃありません”ですよね?」

「・・・・はは・・・・」


無理だ。
彼女に理想の答えを求めるのは絶対に無理だ。
そう思った趙雲はの手を取り、有無を言わさずその場から離れて行ったのだった。









○月△日
私は可笑しい。
殿に下から見られると、心臓が煩く騒ぐのだ。
それだけではない。殿を見ただけで最近は・・・・。
何かの病気なのだろうか・・・。
馬超に聞いたら「お前はアホか」と言われただけだった。
馬超・・・今度手合わせをした時には、数秒で抹殺参ったと言わせてやる。




鍛錬の帰り道。
趙雲は、廊下で壁に背をもたれ楽しそうに話すと馬超を見かけた。
瞬間ざわざわと騒ぎ出す心。
馬超にだけ向けられているの笑顔に、趙雲がぐっと槍を握った。


「よお、趙雲」

「あ、趙雲さん。こんにちは」

「・・・・こんにちは」


チラリと馬超に視線を向ければ、彼はニヤニヤと自分を見ていて。
趙雲はふっと思い出す。


『お前はアホか』


槍はある。
馬超は丸腰。
勝てる。これなら数秒で決着が着く。
まぁ、馬超が得物を持っていても自分は勝つが。


「・・・・趙雲さん、どうしたんですか?」

「・・・・え?」

「なんか・・・怖い顔してますよ」


の一言で、槍を持っていた趙雲の手の力が抜ける。
馬超はくつくつと笑っている。
それがまた憎たらしい。
いつの間にか馬超を睨んでいた自分に、趙雲は聞こえない程のため息を零す。


「あの・・・ごめんなさい」

「え?」


そんな趙雲にがペコリと頭を下げた。
訳が分からない趙雲は目を丸くする。


「私が馬超さんと話してたから・・・・」

「・・・・え?」

「だから趙雲さん、怒ってるんですよね?」


そうなのか・・・?
自分はそうなのか?
が馬超と話していたから、自分はヤキモチを妬いたのだろうか。
何故ヤキモチ?


(・・・・もしかして、私は・・・・殿の事が・・・・)


それならこの苛立ちも説明がつく。
馬超にを取られた様な気がして、それで自分は苛立っていた。
そうか・・・そうなのだ。
に言われ、自分の気持ちに気が付くだなんて。

自分の中で結論が出て、趙雲はふっと微苦笑した。
だが・・・・。


「大丈夫ですよ、趙雲さん」

「え?」


ニコリと彼女が微笑む。


「私、趙雲さんから馬超さんを取ったりしませんから」

「・・・・・はい?」


その言葉を聞いた馬超が盛大に噴き出す。
趙雲はがっくりと脱力したのだった。









○月□日
私は決めた。
殿にこの気持ちを伝えると。
そう。
私は殿が好きなのだ。
伝えなければ、きっとこの苛立ちは消えないだろう。
唯一つ不安なのは・・・、彼女が理解私の気持ちに答えてくれるかなのだが・・・。




あくる日。
趙雲はを自室へ呼び出した。
お茶とお菓子の用意は出来た。
準備は万端。
後は心の準備だけ。
趙雲は大きく深呼吸をした。


コンコン


控えめに扉が叩かれる。
と同時に大きく跳ね上がる趙雲の心臓。
気持ちを落ち着かせ扉を開ければ、其処にはニコリと微笑むの姿。
やはりその笑顔には心臓が騒いでしまう。


「わぁ〜、すごい!パーティーみたい!」


喜ぶに、ぱあてぃいとは?と思いながらも席に促す趙雲。
子供のように目を輝かせる
趙雲はクスクスと笑う。


「これ、食べてもいいの?」

「ええ。どうぞ」

「わっ!嬉しい!いただきま〜す」


自分の目の前で笑顔を見せる
趙雲はすごく幸せな気持ちになる。
気持ちを伝えずこのままでもいいかなと思ってしまう。
だが・・・・。


「この前、馬超さんの所で食べたお菓子より美味しいです〜」


ピクリと眉が動く。
馬超・・・?
彼女はそんなに馬超と交流しているのか?
何となく面白くない。
馬超の前でもこんな風に笑顔でお菓子を食べているのか?
全くもって面白くない。

思わずむすっとした顔をする。


殿」

「はい?・・・・・趙雲さん、怒ってるんですか・・・?」

「ええ、少し」


ニコリと笑ってみせる。
貴女が私の前で馬超、馬超と言うからです!
心の中でそう叫ぶ。
だが彼女は。


「ごめんなさい・・・。はい、趙雲さんの分ですよ」


お菓子を差し出してきた。
そのお菓子を前に趙雲は呆気に取られてしまう。


「あれ・・・?違うんですか?」

「え?」

「私が趙雲さんの分まで食べちゃってるから・・・怒ってるんですよね?」


違います!私はそんなに卑しくありません!
と、再び心の中で叫ぶ。
お菓子を受け取らない趙雲に、は困惑した表情を浮かべた。


「あ・・・あの・・・・」

殿」

「は、はい・・・」

殿は、そんなに馬超がお好きですか?」

「・・・へ?」


ヤキモチを妬いていると悟られたくない。
だが、遠まわしでもそれを伝えたい。
趙雲はの答えを待った。
きょとんとしていたが、ニコリと微笑んだ。


「はい。好きですよ」

「え・・・?」


頭上にガーンと言う文字が現れる。
な、何と言う衝撃・・・・。
自分が想っている彼女は、馬超の事を想っていて・・・・。
聞かなければ良かったと、趙雲は今更ながらに後悔する。


「趙雲さんは、馬超さんが嫌いですか?」

「・・・・え?・・・・いや、嫌いでは・・・ないですが」

「ですよね」


ニコリと微笑む。
・・・・どう言う意味だ・・・?
彼女の言っている意味が分からない。
再びお菓子を食べ始めたを、趙雲は目を見開いて見る。


「・・・・姜維の事は・・・?」

「好きですよ」

「関羽殿は・・・?」

「はい、好きです」

「張飛殿」

「好きですよ」

「・・・・諸葛亮殿・・・・」

「好きですよ」


脱力、脱力、脱力。
そう言う事か・・・。
特別な感情ではなく、一人の人間として彼女は言っているのだ。
ほっと安堵する。

だが・・・。これでは自分の気持ちを伝えられない。
たとえ伝えたとしても、皆と同じように言われて終わりそうだ。
そんな時。


「私、趙雲さんも好きですよ」


やっぱり。
がっくりと項垂れる趙雲。
本当は言われて嬉しいはずなのに、何故か虚しさが勝る。


「・・・・ありがとうございます・・・」


とりあえずのように礼を述べる趙雲。
はにっこりと微笑んでいる。


「趙雲さんは・・・・、私の事、嫌いですか・・・?」

「・・・好きです」

「よかった。嬉しいです」


ハッとなる。
今自分は言ってしまわなかったか?
何気なく、普通に好きだと。
それに対して彼女は・・・嬉しい?

ゆっくりと顔を上げる。
目の前のは、恥かしそうに頬を染めて微笑んでいて。


「私も、趙雲さんが大好きです」


そう言った。
目をぱちくりとさせる趙雲。


「あ、あの・・・、それって・・・他の方と・・・・」

「え・・・?・・・同じじゃないです」


口を尖らせる
ってことは・・・それは・・・。


「あの・・・姜維よりも・・・?」

「好きですよ」

「馬超よりも・・・?」

「好きですってば!もう!何回も言わせないでください!」


顔を真っ赤にして顔を背ける
趙雲の顔がぱぁーっと明るくなる。


殿!」

「うわっ!」


嬉しさのあまり立ち上がり、趙雲はを抱きしめた。
椅子がガタンと音を立てて倒れる。


「私も、私も殿が好きです」

「・・・はい。嬉しいです」

「ずっと・・・お慕い申し上げておりました」


きゅっとの腕が趙雲の背に回る。


「はい・・・。私もです」


こんな嬉しいことが、幸せな事があってもいいのだろうか。
身を離せばは恥かしそうに微笑んでいて。
その笑みに、趙雲も心の底から笑顔になる。


「貴女が、誰よりも愛おしいです」


柔らかなの唇に、そっと唇を重ねたのだった。









○月◎日
馬超に勝った!














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久しぶりの趙雲夢でした。が!趙雲がかなりヘタレになってしまいましたw
ってか馬超に敵対心持ってるしww
ギャグなの?甘いの?なんなの?って路線ですww(なんだそりゃ)
ちなみに、ヒロインはかなりの天然さんですww

こちらは暫くの間フリー配布しております^^
はい、20000HIT記念です♪
でも・・・ごめんなさい、カッコいい趙雲じゃなくて(撃沈)
こんな趙雲ですが、お好きに連れて帰ってくださいw

報告は無くてもいいのですが、出来れば一言頂ければ幸いです。
「頂きます」だけでもOKですよwwwもちろん無記名で構いません♪
ってか、誰か嫁に貰ってくれる人はいるのでしょうか・・・・(汗)

20000HIT、本当にありがとうございました!!

駄目夢・響

08,3,17
















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響様のサイト駄目夢が20000ヒットし、そのお礼としてフリー配布されている夢小説ですv
危惧されていたので僭越ながらわたくしが娶りましたvvv
趙雲はヘタレが能く似合いますよねv満身肝の様だとか殿に云われてるけどvvv
素敵で鼻血がでてしまいますーvv
響さん、2萬超打おめでとうございましたvvv